しじみとポリアミン
しじみに豊富に含まれる栄養素の中には、ポリアミンという成分を作り出すものがあります。
あまり馴染みのない名前ではありますが、実は私たち人間が生命活動を行う上で、欠かすことのできない物質です。
しじみに含まれる成分からポリアミンが作り出される過程や、それによってもたらされる効果について、確認してみましょう。
ポリアミンとは
ポリアミンは、たんぱく質の合成や細胞増殖を行うために必要で、人間、動物、植物、ウイルスといったあらゆる生物に存在する成分の総称です。
人の体内の場合、精子や酵素を作る器官(前立腺、唾液腺など)に多く、20種類以上のポリアミンが存在しています。
ポリアミンの合成
ポリアミンは、しじみなどに含まれるグルタミン酸と、アルギニンという成分を原料にして作られます。
この二つは、どのような成分なのでしょうか?
また、ポリアミンはどのような過程を経て合成されるのでしょうか?
グルタミン酸とは
しじみには、可食部100gあたりに680mgのグルタミン酸が含まれています。
グルタミン酸は、旨味成分の代表的な存在として知られ、調味料にも利用される成分です。
体内では神経伝達物質として働くほか、アンモニアの排出を助けたり、他のアミノ酸の原料となったりするなど、たくさんの作用をもちます。
アルギニンとは
しじみ100gには、440mgのアルギニンが含まれています。
アルギニンは、血管を広げて血液の流れを良くする作用をもつ一酸化窒素を作り出します。
また、グルタミン酸同様にアンモニアの排出を促進したり、他のアミノ酸の原料となったりする物質でもあります。
ポリアミンの合成過程
人の体内に存在するポリアミンの中で代表的なプトレスシン、スペルミジン、スペルミンは、以下のような工程を経て合成されます。
アルギナーゼなどの酵素の働きによって、グルタミン酸とアルギニンから、オルニチンが作り出されます。
次に、作り出されたオルニチンから、オルニチン・デカルボキシラーゼという酵素により、プトレスシンが合成されます。
更に、スペルミンシンターゼという酵素により、プトレスシンからスペルミンが合成されます。
これらのポリアミンは、特に増殖が活発な細胞内において合成されています。
ポリアミンの効果
作り出されたポリアミンは、どのような効果をもたらすのでしょうか?
アンチエイジング効果
ポリアミンには、新陳代謝を促進し、ターンオーバー(※)を正常化するという役割があります。
ポリアミンによって細胞分裂が正常に行われるということは、皮膚、爪、髪などの外見的な若さはもちろん、内臓や血液といった体の内部の健康を保つ上でも大変重要です。
※ターンオーバーとは...古くなった細胞が新しく生まれ変わるまでの周期。
お肌でいうと、20代のターンオーバーは正常な28日であるのに対し、40代ともなると約2倍の55日かかるといわれ、ターンオーバーの遅れがしみやしわの増える要因と考えられている。
抗炎症作用
炎症は本来、体を守るために起こる反応です。
しかし、加齢によって炎症性サイトカイン(※)が過剰に分泌されるようになると、炎症が慢性的に体内に起こる「慢性炎症」を引き起こすことがあります。
ポリアミンには抗炎症作用があり、炎症性サイトカインの過剰な分泌を抑制します。
慢性炎症は、動脈硬化などの生活習慣病や、がんの一因でもあると考えられているため、ポリアミンにはそれらの疾患の発症を予防する効果が期待されています。
※炎症性サイトカインとは...体内で起こった炎症反応を促進させる、免疫に関わるたんぱく質。
反対の働きを持つものに抗炎症性サイトカインがあり、両者のバランスが崩れると自己免疫疾患などを引き起こす。
しじみを食べて、ポリアミンの原料を補おう!
若いうちは、細胞自らが自発的にポリアミンを生合成しています。
しかし、その合成力は年齢とともに低下してしまうといわれています。
年齢が気になり始めたら、グルタミン酸やアルギニンを豊富に含むしじみを食べ、ポリアミンの原料を積極的に供給しましょう。