しじみの摂取制限がある場合とは
肝臓に良いことで有名なしじみは、アルコールを飲む機会の多い人や、肝臓の健康が気になる人には特に注目される食材です。
しじみが鉄分などの栄養素を豊富に含んでいることには間違いありませんが、実はそれゆえに、しじみの摂取を制限したほうが良い人もいるのです。
しじみに含まれる鉄とその役割
しじみには、豊富な鉄分が含まれています。
鉄分は、私たちの健康を維持する上で大切な役割がありますが、肝臓が悪い人にとっては、鉄の過剰摂取が悪影響をもたらすこともあるのです。
鉄の役割
赤血球を作ったり、酸素を身体中に運搬したりする上でなくてはならない栄養素なのが、しじみなどに含まれる鉄です。
鉄の弊害
しかし、肝臓の調子が悪い方や、肝臓病の診断を受けている人は、鉄の摂取を控えなければならないことがあります。
その理由は、鉄と肝臓の関係性にあります。
しじみなどを摂取して得た余分な鉄は、肝臓の細胞内に蓄積されて代謝されますが、その際に強力な活性酸素を発生させます。
活性酸素は、酸素よりも反応性が高く、酸化ストレスを与えて肝細胞を傷つけます。
肝機能が阻害されることで、細胞に炎症や線維化が起こりやすくなり、脂肪肝などの状態の肝臓は、肝炎や肝硬変を引き起こしやすくなります。
また、活性酸素の刺激は、DNAを傷つけることによって、がんを発症させることがあります。
こうしたことから、肝臓病の進行を防ぐためには、鉄の過剰な摂取を避ける必要があります。
摂取制限のある疾患
前述の理由から、以下のような疾患にかかっている人は、しじみのように鉄分が豊富な食材の摂取を制限しなければなりません。
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)
NASHとは、どのような病気なのでしょうか?
まず、脂肪肝にはアルコール性(お酒を大量に飲むか、よく飲む人)のものと、非アルコール性(全くお酒を飲まないか、あまり飲まない場合)のものがあります。
非アルコール性のうち、脂肪肝から肝炎、肝硬変と進行していく一連の肝臓病を、「NAFLD」と呼びます。
NAFLDの8~9割の人は脂肪肝から進行しないのに対し、このうち1~2割の人に肝硬変や肝がんを発症することがあります。
このように、さらに進行していく一連の肝臓病を「NASH」と呼びます。
NASHの人は、肝臓に鉄分が溜まりやすいといわれているため、鉄の摂取時には注意が必要です。
肝炎
肝炎は、肝細胞に炎症が起こることにより、肝細胞が損傷を受けて破壊される病気です。
肝炎ウイルスへの感染を起因とするもの、アルコール性のもの、自己免疫性のものがあります。
中でも、肝臓への鉄の蓄積が顕著にみられるC型肝炎患者は、特に注意が必要です。
その他の場合
他にも、アルコールを多量に摂取する人の場合も同じく注意が必要です。
アルコールをよく飲む人で、同じく鉄の豊富なウコンとしじみエキスを毎日摂取した人が、劇症肝炎を発症したケースがあります。
本来、どちらも肝臓に良いとされている健康食品ではありますが、このような自己判断での過剰摂取は危険です。
また、医師から鉄分の摂取を制限されている場合も同様です。
摂取を制限すべきかどうか不明な場合は、医師の判断を仰いでください。
しじみに含まれる鉄と摂取目安量
殻を除いたしじみの可食部100gあたりには、5.3mgの鉄が含まれています。
鉄は男性なら1日に7~7.5mg、女性なら6~6.5mg摂取するのが好ましいとされています。
実際、一日の摂取目安量の鉄を得るのに、殻を除いたしじみを1日に100g以上も食べるのは思ったよりも大変です。
しかし、栄養素が凝縮されたしじみエキスやサプリメントであれば、このくらいの鉄分量は簡単に摂取できてしまうのです。
あるメーカーのしじみエキスを粒状にした健康食品では、1日の目安量4粒で6mgの鉄が摂取できると表示しており、女性に必要な1日分の鉄がほぼ補えることになります。
他の食材からも鉄を摂取することを考えると、肝臓が悪い人にとっては、過剰摂取になりかねません。
鉄の過剰摂取に注意しましょう!
しじみは肝臓に良いというイメージが定着しており、鉄分は体によいというイメージが定着しています。
しかし、それが逆効果となるケースがあるのです。
特に、肝臓の調子が悪い場合や疾患がある場合は、自己判断でむやみに摂取しないよう気をつけましょう。