しじみに含まれる葉酸
しじみに含まれる栄養素の中に、葉酸というものがあります。
葉酸は妊娠中の女性に必要不可欠なビタミンとして知られていますが、それだけではありません。
他の栄養素と協力し合うことで、さまざまな病気の予防に役立つのです。
このページでは、葉酸の役割と、葉酸をしじみから摂ることで得られる相乗効果についても解説します。
葉酸とは
葉酸は、ほうれん草から発見されたビタミンB群の一種で、しじみにも含まれています。
葉物野菜に豊富であることから、葉酸と名づけられ、ビタミンB9やビタミンMなどの別名があります。
しじみの葉酸
しじみの可食部100gには、葉酸が17μg含まれています。
性別を問わず、成人の場合の必要量は一日に200μgとされており、240μgの摂取が推奨されています。
妊娠中や授乳中には必要とされる量が増えますが、特に妊娠を希望している女性は、一日に400μgの葉酸を摂取することが推奨されています。
葉酸の役割
葉酸には、たんぱく質や細胞の合成に必要な、DNAやRNAなどの核酸を作る役割があります。
そのため、血液細胞の形成や、胎児の健やかな発育のためには欠かすことができません。
血液細胞の形成
葉酸は、造血ビタミンと呼ばれるビタミンB12と助け合って、血液細胞を作ります。
葉酸の欠乏は、ビタミンB12の欠乏時と同じように、悪性の貧血を引き起こします。
胎児の発育
妊娠初期は、神経系の基礎となる神経管をはじめ、脳など多くの重要な器官が形成される時期です。
この時期の母体に葉酸が不足していると、胎児の脳と脊髄が正常につながらずに「神経管閉鎖障害」という発育不全を引き起こすことがあります。
妊娠を計画中の女性は、十分な量の葉酸を摂取することによって、このリスクを8割近く減らせることが分かっています。
動脈硬化予防
詳細は4-3で後述しますが、葉酸には他のビタミンと協力して動脈硬化を予防する効果があります。
相性の良い栄養素
数ある食品の中で、しじみにおける葉酸の含有量は決して多い方ではありません。
しかし、葉酸をしじみから摂るメリットは、しじみに含まれる他の栄養素との相性にあります。
単体では効果を発揮しにくいビタミンB群は、同じくB群に属する他のビタミンと一緒に摂取することが重要です。
しじみには、ビオチンを除く8種類のビタミンB群が含まれていますが、特に葉酸と相性が良いのは以下のような栄養素です。
パントテン酸(ビタミンB5)
パントテン酸は、たんぱく質、脂質、糖質の代謝を助け、エネルギーの産出などを行う上で必要なビタミンです。
「抗ストレスホルモン」とも呼ばれ、葉酸やビタミンB6などと一緒に摂ることで効果がアップするといわれています。
ビタミンB6
ビタミンB6は、食事から摂取したたんぱく質からエネルギーを産出したり、血液や筋肉の形成に重要なはたらきを持つビタミンです。
また、葉酸やビタミンB12とともにメチオニン代謝(※)に関わり、動脈硬化を予防します。
※メチオニン代謝とは...肝臓における代謝のサイクルのひとつです。
アミノ酸の一種であるメチオニンは肝臓の機能を高めますが、その際一時的にホモシステインという物質に代謝されます。
ホモシステインは、葉酸やビタミンB12によって再度メチオニンとしてリサイクルされるか、ビタミンB6によりシステインに代謝されるのが正常なサイクルです。
しかし、これらのビタミンが不足すると、このサイクルが正常に働かないために、血中のホモシステイン濃度が増加します。
ホモシステインは、動脈硬化などの心臓・血管系疾患の原因のひとつであるため、予防のためにはこれらのビタミンをバランス良く摂取することが重要です。
ビタミンB12
3-1.でも触れましたが、葉酸とビタミンB12には造血作用があります。
この二つは、協力し合って赤血球中のヘモグロビンの生成を助ける作用があり、悪性の貧血を予防します。
また、神経を守り、脳の発育を助けるなどのはたらきがあります。
他にも、前述の通り、ビタミンB12は葉酸やビタミンB6とともに、肝臓におけるメチオニン代謝にも関わっています。
ビタミンB12は、しじみと同じ二枚貝ではあさりに多く含まれます。
しじみとあさりを食べ合わせることで、葉酸と相性の良いビタミンB12をより多く摂ることができます。
葉酸で健康維持を心がけよう!
葉酸は、熱に弱く水に溶けやすいという性質を持っています。
そのため、しじみを調理する際には必要以上に熱を加えないことと、だしや栄養素の豊富な煮汁も一緒に食べるようにしましょう。
通常の食事では、葉酸は過剰摂取の心配はありません。
しじみなどの食品から、積極的に摂るようにしましょう。