しじみの加熱調理の必要性
牡蠣やホタテなどは、日本では生で食べることも多い二枚貝です。
しかし、しじみを生で食べるという話は聞いたことがありません。
なぜ、しじみは加熱調理する必要があるのでしょうか?
今回は、加熱調理をしっかりと行わなかった場合に考えられる危険性をふまえ、ご紹介していきます。
アノイリナーゼによる影響
生の状態のしじみには、アノイリナーゼ(別名チアミナーゼ)と呼ばれるビタミンB1分解酵素が含まれています。
アノイリナーゼは、わらび、ぜんまいなどの山菜や、淡水魚や貝類といった魚介類に含まれており、摂取すると、腸管内で食物から摂取したビタミンB1を破壊します。
その結果、ビタミンB1欠乏症を発症するおそれがあります。
ビタミンB1欠乏症とは
ビタミンB1欠乏症を引き起こした場合の代表的な疾患には、脚気があります。
末梢神経に影響を及ぼすため、腱反射の低下や、脚のむくみ、倦怠感、動悸、息切れなどの症状が見られます。
加熱調理による対策
アノイリナーゼの破壊作用は熱に弱く、加熱することでその作用を失わせることができます。
食べる際には、充分な加熱を心がけることが大切です。
ノロウイルス感染症の危険性
しじみをはじめ、あさりや牡蠣のような二枚貝からノロウイルスが検出されることがあります。
これらの貝類からノロウイルスが検出される理由は、その生態に関係しています。
ノロウイルス感染症とは
ノロウイルス感染症は、ノロウイルスに感染することで急性胃腸炎を引き起こし、腹痛、下痢、嘔吐などの症状を発症させる感染症です。
健康な成人であれば数日間で症状は治まりますが、子供や高齢者の場合は稀に重篤化することもあります。
感染経路は、感染者の排泄物からの感染の他、ウイルスを蓄積したしじみや牡蠣などの貝類を食べることでも起こります。
二枚貝の生態とウイルスの関係性
しじみやあさり、牡蠣などの二枚貝は、水中のプランクトンを餌にしています。
プランクトンを摂食する際には、水中のウイルスなどを一緒に取り込んで大量の水をろ過し、中腸腺と呼ばれる内臓に蓄えます。
その中に、ノロウイルスが存在することがあるのです。
実際に起こった食中毒
実際に、しじみのノロウイルスによって食中毒が起こった事例があります。
ある飲食店で、しじみの醤油漬けを食べた8名のうち、7名が嘔吐や下痢などの食中毒の症状を訴えました。
そこで、保健所が調査を行ったところ、患者の便からノロウイルスが検出されました。
提供されていたしじみの醤油漬けは別の日に調理されたもので、貝が開く程度の加熱しか行われていませんでした。
しじみの身は、加熱しすぎると、固くなったり、食感が悪くなったりするため、生に近い状態で提供していたとのことです。
加熱調理による対策
ノロウイルスもまた、加熱による対策が効果的です。
ウイルスは内臓に存在しているため、貝表面や身を洗うだけで除去することは不可能です。
一般的な食品の加熱方法として、中心部を85~90℃で1分もしくは1分半以上加熱することが重要であるとされています。
しじみの身が固くなってしまうことを防ぐには、長時間沸騰させ続けないことです。
一度沸騰したら、火力を調節してそのまま加熱を続けます。
また、その際にお酒を入れることで、身がふっくらして食感が損なわれるのを防ぐことができます。
ぜひお試しください。
A型肝炎の危険性
しじみなどの二枚貝はA型肝炎ウイルスに汚染されることがあります。
A型肝炎ウイルスもまた、ノロウイルスの場合と同様にプランクトンを摂食する際に汚染されると考えられています。
A型肝炎ウイルスとは
A型肝炎ウイルスとは、感染するとA型肝炎を引き起こすウイルスです。
発展途上国に比べると、現代の日本のような先進国での罹患率は低いものの、衛生環境に左右されやすく、海外渡航の他、衛生管理の不十分な飲食店などを媒介して感染する例もあります。
A型肝炎の症状としては、下痢、発熱、嘔吐といった食中毒症状が起こりますが、一過性で、慢性化しにくい病気です。
しかし、高齢者の場合、ノロウイルスの症状よりも重篤化しやすく、肝臓疾患の中でも最も重いといわれる急性肝不全を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
加熱調理による対策
A型肝炎ウイルスの感染予防にも、加熱調理が効果的です。
ノロウイルスの場合と同じく、85~90℃で1分半ほど加熱しましょう。
しじみはしっかり加熱しましょう!
しじみになぜ加熱が必要なのかが具体的に知られていないために、間違った調理法で食中毒が起こったり、健康に悪影響を及ぼすことがあるのです。
知識があれば、そのような事態も回避することができますね。
しじみは正しく調理をして、美味しくいただきましょう。