しじみとプランクトン
しじみは、植物性プランクトンを餌としていますが、この「プランクトンを食べる」という行為は、しじみの住む水域の水質浄化に大きく寄与しています。
そして、私たちの「しじみを食べる」という行為が、同じく環境を維持することに役立っていることも、一般的にはあまり知られていません。
プランクトンの摂食
日本のしじみの代表的な品種であるヤマトシジミは、入水管と呼ばれる管からプランクトンと水を一緒に取り込みます。
その際、生息する環境に対し、多くの良い影響をもたらしています。
水質浄化
水中に漂う植物性プランクトンは、異常に増殖すると水質汚濁の原因となることがあります。
そのため、しじみが植物性プランクトンを食べることは、水質の改善に直結します。
しじみ1gあたりが1時間に取り入れる水の量は、170mlです。
ヤマトシジミの産地として有名な宍道湖には、約3.1万トンのしじみが生息していますが、単純計算すると1時間に52億7000万リットルもの水をろ過できることになります。
この数字は、宍道湖に存在する全ての水は3日間あればろ過できることを示しています。
しじみを使ったろ過実験
しじみの高いろ過作用は、簡単な実験で目にすることができます。
植物プランクトンで透明度の失われた水に、しじみを入れておきます。
そうすると、ものの数時間で水の透明度が戻ることが確認できます。
他生物への影響
しじみは、プランクトンを摂食した後、えらで濾し取った残りを便として排出しています。
この排出物は、魚やエビ、カニなどが生きていく上でなくてはならない、他の生き物の大切な餌のひとつとなるのです。
しじみがいることで、同じ環境に住む他の生き物にも良い影響を与えていることが分かります。
しじみの生態と富栄養化
水質の浄化に関連して、しじみによるプランクトンの摂食には、環境問題を解決する糸口を見出すことができるかもしれません。
富栄養化とは?
富栄養化とは、湖や沼などに窒素化合物やリンなどの栄養塩が増加することです。
湖沼が形成される過程で自然に富栄養化する場合と、生活排水や工業排水による人為的な富栄養化があります。
富栄養化した湖沼では特定のプランクトンが異常に増え、透明度が低下したり、青潮や赤潮が発生して魚介類を大量死させるなど、環境問題の一つとして取り上げられています。
人工的に富栄養化を防ぐ場合、下水処理場など莫大なコストのかかる施設の建設が必要です。
ただし、それもあくまで防止策にすぎず、すでに流入してしまった有機物を取り除く効果的な方法は開発されていません。
しじみが富栄養化を防ぐ
しじみの生態には、この富栄養化を防ぐという作用もあります。
しじみは、プランクトンを摂食する際に、窒素やリンなどの有機物を一緒に取り入れます。
これらは成長に役立つ栄養素として利用し、その後体内に長時間蓄えるのです。
「しじみを食べる」ということ
私たちがしじみを食べること。
それは、このような環境問題解決の一端を担うことになっているということも、今回お伝えしたいことの一つです。
私たちは、普段何の気なしにしじみを食べています。
ですが、私たちがしじみを食べて初めて、水質の浄化が完了するのです。
なぜなら、しじみを水揚げするということは、窒素やリンを蓄えたしじみを湖沼から除去するということだからです。
この「水揚げして食べる」ということこそが、しじみだけでは成し得ない水質浄化を、完遂に至らせる最後の工程なのです。
環境のためにもしじみを食べよう!
しじみのプランクトンを食べるという行為は、地球環境を守り、他の生き物に給餌するなど、さまざまな副産物をもたらします。
しじみを食べ、しじみの住む美しい環境に思いを馳せてみませんか。